2015年2月17日火曜日

【書評】そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか

すぐに会社を辞めるわけではないのですが、「そろそろ会社辞めようかな」と思った時に必要そうだと思い、準備のために手にとった本。
感想を一言で言うと、すぐさま起業したい!っていう人にはクールダウンになるし、別に起業には興味ないっていう人は熱くなる、そんな感じの本です。

そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないかそろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか
(2013/01/30)
山口揚平

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本書では、単純に「好きなことを仕事にすると楽しいよ!」と簡単に煽ることなく、「好きなことで食べていくっていうのは、生きている実感があって、すごくいいよ!でもそのためには、食うための「土台(=プロフィット・モデル)」が大事だよ!」という主張をしています。非常に好感が持てます。


 フリーで食べてゆくために必要な3要素

本書で著者は、「フリーで食べてゆくには、『バリュー』『システム』『クレジット』の3つが必要だ」と主張しています。そして、本書は、2番目の『システム』にフォーカスして書かれています。著者のいう『システム』とは、お金が入ってくるためのモデル(プロフィット・モデル)のことです。

起業したい!と思っている人にとって、この『システム』は非常に重要な課題です。どうやって価値を継続的に生み出していくのか、ここをきっちり抑えておかないと、志半ばで終わってしまいます。
私も現在、教育分野での起業を検討していますが、固定費が大きく、キャッシュをどうしても浪費してしまうビジネスなので、プロフィット・モデルを見直し、もう少し身軽にスタートしつつ、キャッシュを得られるシステムに改善できないか、考え直す必要があると思いました。


 起業までの3つのステップ

私が本書で最も参考になったのは、第3章「起業までの3つのステップ」です。
師匠に弟子入りして丁稚奉公しつつ、自分のミッションを考え人に伝えていく「潜伏時代」、潜伏時代に貯めたノウハウなどをアウトプットし、他人から収入を得られるようになっていく「独立時代」、そして単なる個人的な仕事ではなく、継続的に価値を生む事業を営む「起業時代」、という3つのステップについて紹介しています。

この3つ、私にとっては非常に納得性の高いものでした。
そして、起業しよう!と前のめりになっている自分の頭をクールダウンさせてくれました。


 自分がやりたいことよりも「他人の検証」

頭をクールダウンできた理由は、下記の一節を読んだからでした。

こうして収入が年間100万円を超えるようになってきた頃、飛行機が浮力を得て、空に飛び立つがごとく独立する-というのが、ナチュラルで間違いがないと僕は考えています。
まあ、本当のところ、収入は10万円でもいいのかもしれませんが、大事なのはとにかく自分がやりたいことよりも、「他人の検証」です。たとえ自分では「できる」と考えていても、お金が入るオファーが来るようになるまでは、独立はしない方がいいと思います。(P132)

私が始めようと考えている事業は、この10年間いた住宅業界とはまったく違う、教育業界です。ノウハウも経験もない。もちろん、経験がないからこそ、業界の中で独自のポジションをとることができると思っていますが、今のままではリスクが高い。お客様からお金を頂くだけのコンテンツがまだ十分にありませんし、プロフィットモデルも、若干危なっかしいと感じていました。その事を認識はしていましたが、起業するぞー!とやや意気込んでいました。このまま起業したとしても、事業が波に乗る前に、キャッシュが尽きてしまう可能性の方が高い。
まずは事業におけるコンテンツのプロトタイプを作って、想定顧客に使ってもらってフィードバックしてもらうのが先だと思いました。「ゼロ秒思考」の赤羽さんも仰っている、『リーン・スタートアップ』の手法ですね。

もちろん、リスクをゼロにしようなんて思ってはいませんが、食べ盛りの子供2人を抱える自分にとっては、背負わなくてもよいリスクはなるべく遠ざけていきたいと考えています。


 固定費の増加は、自分のエゴの結果が7割

これ、ガツンときた気がします。

固定費ですが、もう固定費に関しては徹底して憎むことです。固定費は、家賃や人件費とかが当てはまりますが、これは何もしなくても毎月出て行くお金なんですね。この固定費が初期の事業をすごく苦しめます。収入が安定しないのに費用が固定しているのは致命的な問題です。
だからもし、人を雇うといった固定費が増えるタイミングでは、慎重になって、必ず外部の人間に意見を聞いた方がいいでしょう。
固定費の増加は、会社の自然な成長というよりも、会社や自分を大きく見せたいという自分のエゴの結果であることが7割以上と思った方がいいです。(P139)

私が考えてる事業は、教室が必要ということもあり、固定費がかかってしまうと考えていたのですが、上記一節を読んで、少し調整することにしました。
今は、シェアビジネスが非常に活発なこともあり、少し調べると、セミナー向けのレンタルスペースなんかが、かなりの数出てくるんです。都内でも、安いところでは1時間500円。ずっとレンタルスペースを使い続けるかは別として、固定費の「変動費化」を、もっと考えていきたいと思いました。


 その仕事は金に近いのか、夢に近いのか?

「これは儲かる」というキャッシュフローの軸と、「これは自分のビジョンややるべきことと整合している」という2つの軸があります。つまり「金に近いのか?」「夢に近いのか?」という問題です。
この2つは、どちらがいいとかいう問題ではありません。「わたしと仕事のどっちを取るの?」と彼女に詰め寄られたときの答えと同様、この場合も「どちらも大事」が正解なのです。(P164)

これは、企業の研究開発の議論にも近いものがあります。革新的テーマをやるのか、地味なコストダウンテーマをやるのか、みたいな。私は、常に両輪回しておく派でした。どっちかに偏ってしまうと、ダメだった場合のダメージが大きいんですよね。起業する場合は、キャッシュがなければ全く何もできませんから、「金に近い部分」は当然ながら外せないですね。

あと、気になった内容を、引用しておきます。色々とヒントをもらうことができました。

・リスクを回避する法人契約はぜひとも取ろう
・意思決定は「頭で考えて、整理し、ハートで判断する」
・事業における最大コストは経営者の心の管理
・論理(ロゴス)・情理(パトス)・倫理(エトス)を調和させることで、ビジネスが長く続く
・能力を上げるよりもプライドを下げる努力をしよう。
・優秀さとは、有能さと謙虚さの掛け算である
・信用=(専門性+確実性+親密度)/利己心

会社をすぐ辞めたい人は、読んでおいて損はないかと思います。

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